フランス、モンペリエのホームステイのパパのクロウドは、シャンソンが大好きだ。
フランス語で歌うは、Chanter(シャンテ)
そこから派生するシャンソンは、フランスの歌の代名詞だ。

パパは、シャンソンを生業にしたくて、ジャックというお友達のバーでイベントのMCをやったりしながら、夢を追いかけていたそうだ。
ただ、子供3人を抱えて、安定しない職業を続けるのは難しいと判断し、40代の時に小学校の先生に転職した。
で、今は、趣味として、シャンソンを思い切り楽しんでいる。
毎週木曜日の夜、そのジャックのバーで「ソワレ」という生演奏会がある。
クロウドは、そこでシャンソンを披露する。

クロウドの歌声は、なんだろう、とっても私の心の琴線に触れる。
たまに、自然に涙が出ることがある。

木曜日は、夕食を気持ち早めに食べ終えて、21時前にバーに繰り出す。
そこには顔なじみのメンバーばかりで、私もよく連れて行ってもらった。

そのバーで、ある日、3週間に渡って、素人の勝ち抜き戦が繰り広げられた。
年齢層も若い人からお年寄りまで幅広い。
バンドもあれば、ギターソロ奏者、アカペラ、ピアノ弾き,アコーディオン、そして、音楽ではなく、語り、詩の朗読など何でもあれといった感じだった。

クロウドは、応募せず、観覧側だった。
こんなバラバラのジャンルをどうやって、競わせるのか、判断基準は定かではないのだが、確かに勝ち抜いて行く人達は、レベルが高かった。


チャンピオンは、翌月にソロライブができるということもあり、決勝戦の日のジャックのバーは、立ち見が出るほど賑わった。

地元のモンペリエの新聞社の記者とカメラマンもいた。
さて、いよいよ、結果発表の時間になった。

「栄えある、シャンピオン(フランス語のチャンピオンの発音は、このように上品な響きになる。)の発表です!」というところまできた。
息を凝らして皆、結果を待っているのに、司会者が、なんだか笑わせようと思ったのか、くだらないことをペラペラ言い始めた。
すると、会場の人々が、すごい勢いでブーイング!


「早く結果を言え!」と主張し始めた。
そんな気まずい雰囲気の中、結果発表。
女性デュオがシャンピオン!!
私達も納得の結果!会場も、よかった、よかった!!とお祝いムード。
アンコールの演奏が始まった。
すると、モンペリエ新聞社のカメラマンが、いい写真を撮ろうと必死にパシャパシャとシャッター音を鳴らして激写し始めた。


すると、すかさず、クロウドが「邪魔だ、どけー!」と物凄い勢いで怒鳴ったので、横にいた私はびっくりした。
更に驚いたのは、他の人達が更に大声で、「邪魔だ、どけー!」と言うのである
私はドキドキしてしまったのだが、別に気まずいというわけでもなく、後にも引かないのである。
クロウドを含めた、怒鳴った人達、そして、怒鳴られたカメラマン、皆が何事もなかったようにケロっとしているのである。

こういうところってフランス人ぽいなって思う。
それこそ、フランスンに来た当初、クロウドが運転する車に割り込んで危ない運転をしてきた人がいた。
するとクロウドは、すかさず、クラクションを鳴らした後、今度は、その車に並走するポジションを取り、窓を全開にした。
そして、
「おりゃー--ひどい運転するなー!!危ないだろうー-」と暴言に近い物言いをした。

ギョーーー!!この先、どうなるんだ!乱闘か?なんてドキドキしていたのだが、クロウドは、「ボンソワレ、よい夜を!」となんだか、急に全然違う方向の物言いで締めた。

そして、何事もなかったように、また運転を続けた。
文句があれば、その場ではっきり言う、それでおしまい!という文化は、日本と全く違うなー-って感心する出来事だった。
そんなわけで、本日のお話しはここまでー-
またねー-
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