33歳の時、客室乗務員(クルー)になるチャンスを得た。
6週間の訓練が終わり、いよいよ制服を着て、機内デビュー。(前回の話し↓)
ただ、正式のクルーになるには、3回のチェックフライトをパスしなければいけないので、まだまだ気は抜けない。
私のデビューは、シドニーからベトナムのホーチミン便。
約9時間のフライトだ。

私が入社した頃は、この他に、タイのプーケット、ハワイ、インドネシアのバリ、日本は、大阪に飛んでいた。
仲良し同期の2人で、アンジというオージー(オーストラリア人)のベテランパーサーが私達のトレーナーになった。
アンジは、日本にも数年いたので、日本語も通じる。
しかし、機内の公用語は、英語なので、それをしっかり守る。とても真面目な女性だ。
クルーは、2時間前に空港内のオフィス、クルールームにに集合してブリーフィング(ミーテイング)をする。
私の飛ぶ飛行機のクルーは、9人。
ドアが8か所あるので、それぞれ1人ずつが担当し、それに加えて、アシスタント1人がビジネスクラスに配置される。

パイロットは、通常2人だ。
まず、空港内のクルールームで、パイロットから当日の飛行ルートの説明がある。
飛行時間、途中どのあたりで揺れるか、注意点などを聞く。
その後、クルーのみのブリーフィングになる。
パーサーから、各ポジションの発表。
私達は、アンジのチェックがあるので、ビジネスクラスだ。
そして、大変な訓練でさんざん勉強したsafety issueの質問がある。
5週間の訓練時代に勉強した内容の中から、ランダムに質問が飛ぶ。
1人1人、じっくり聞かれる時もあれば、学校のように皆に問いかけて、皆で一緒に答えるパターンもある。
ここでできないと場合によっては、飛ぶことはできない。
Safety is our #1 priority 何よりも安全第一だ。
そして、全員で飛行機に向かう。
飛行機に入ると、それぞれのポジションでチェックするものがあるので、各々忙しい。

まずは、安全に関するもののチェック。そして、機内サービスの準備だ。
Welcome drinkも含め、ヘッドセットやブランケットの用意で慌ただしい。
機内サービスの一番メインは、機内食だが、2つの担当に分かれる。
2人1組で実際のサービスをする、「カートチーム」と、ギャレーと呼ばれるキッチンで各ポジション1人で作業をする「ギャレーチーム」だ。
ギャレーは、職人気質の仕事だ。
カートには、サービスに必要な、ドリンク、機内食などを積む。

必要なものが足りなくなると、「ピンポーン」とカートチームから呼ばれ、補充作業がある。
マニュアルはあるのだが、実際に仕事をすると路線によって必要なものが違うので、自分達のやりやすいように工夫しなくてはならない。
例えば、日本線は、事前に機内食を申し込んでいるお客さんが多いので、お菓子やカップラーメンの別売りのモノは、最初の食事サービスのカートにはほぼ必要ない。
しかし、プーケットや、ベトナム線だと、その逆が多いので、スナックを多めに積む必要がある。
よいギャレー職人として評価されるのは、呼び出しが極力なく、スムーズにカートチームがサービスができる時だ。

ビジネスクラスのギャレーは、食事サービスのあと、チーズとデザートの乗った、「デザートカート」の準備がある。
また、パイロットのお世話もあるので、大忙しだ。
さて、私のデビュー線は、そのビジネスクラスのギャレーだった。
ズバリ、しっちゃかめっちゃかだった!
初めて、お父さんが料理した時の流し台のような状態だった。

几帳面なアンジが、”OH Mutsi!“とびっくりしているものの、一生懸命励ましてくれる。
この国の人は褒めて育ててくれる。
お客さんもとても優しかった。
途中でスナックを配ったり、着陸前の食事の用意、着陸準備で9時間がぶったまげるほど,
あっという間だった。
疲れたけど、爽やかな疲労感だった。

こんなバタバタ訓練飛行を3回繰り返し、無事にテストフライトも合格した。
晴れて正式なキャビンクルーになれた。おめでとう、私!

3月初旬に泣きながらシドニーに着き、相当追い込まれ、一時は、脱落という危機にも追い込まれた。しかし、5月には、33歳、「サンサンと輝くスッチー」になれた。

気が付けば、その後、5年飛ぶことになるのだが、まあ、毎回、クルーメンバーといい、お客さんといい実に色々なフライトがあった。
まだまだ機内でのお話は、たくさんあるのだが、また機会を見てお話ししたいと思う。
というわけで、当機は、まもなく到着となります。本日もご搭乗いただき、誠にありがとうございました。
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