【CA体験談】「お客様の中にお医者様いらっしゃいますか?」のアナウンスが流れたフライトの話し

客室乗務員

本日もご搭乗いただき、誠にありがとうございます。

シドニーからベトナムのフライトで、ある女性の乗客が痙攣けいれんを起こした。

オージーのカップルで、男性の方が慌てふためいて、知らせにきた。

この仕事をして、驚いたことの一つに、結構、酸素が必要なお客さんがいるということだった。

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ちょっと気持ちが悪くなったとか、めまいの時は、横になってもらい、様子を見て、酸素吸入するとたいては、落ち着いて回復する。

しかし、今回の痙攣は、ちょっと状況が違った。

チーフパーサに知らせて、

お客様の中で、お医者様か、看護師、または医療従事者の方がいらっしゃいましたら、お座席番号47番までお越しいただくか、お近くの客室乗務員にお知らせ下さい。

とアナウンスしてもらった。

ドラマで見たことがあるが、「おー、本当にこんなことあるんだー!」ってちょっと興奮した。

女医さんと看護師さん2人がこのフライトにいたので、ほっとした。

お客さんも安心したのか、痙攣も止まり、落ち着いたので、酸素吸入に切り替えた。

「よかったねー-。」って言ってたら、今度は、見守っていた、彼の方が「やばいかも、、」と言い出し、真っ青な顔をしてしゃがみ込んでしまった。

女医さんが、脈などを確認して、「大丈夫よ、きっと心配しすぎて、パニック障害みたいになっちゃったわね。」と言い、氷を用意してと指示を受けたので、渡した。

笑ってはいけないものの、ちょっとかわいいなって思って、笑いをこらえた。

何事もなく事が済み、ほっとした。

ここで、てきぱきとアナウンスを流し、女医さんとコミュニ―ケーションをとっていた、このチーフパーサは、実は、癌と戦いながら空を飛んでいた。

まだ40代の若さだ。

いつも元気なので、言われないと、癌患者とはとても思えないのが、腎臓が片方しか機能してないと言っていた。

私がもし癌と診断されたら、たぶんその事実に気持ちが負けて、絶対に塞ぎ込んじゃうと思う。

ましてや、体によくないクルーの仕事なんてやる自信なんて、ない。

本当に尊敬だ。

彼女はその後、国際線から国内線に移り、飛んでいたが、最終的に2年後に亡くなった。

パートナーの話しによると、ドクターストップがかかるまで、飛び続け、最後まで大好きなクルーの仕事が出来て、悔いはないと言っていたそうだ。

久しぶりに彼女の事を思い出して、空にお祈りした。

別の男性チーフパーサーは、26年も飛んでいたが、国家公務員の仕事が見つかり、50歳になってから飛ぶ仕事を辞めた。

ちなみにオーストラリアでは、よく、Goverment Jobと言われる、公務員の仕事の募集があり、50代でも転職する人が多い。

彼は、とても優しく、温かい人柄で私も一緒に仕事をするのが楽しみだったので、退職を聞いて、とても残念だった。

彼のラストフライトに偶然、一緒に飛べることになった。

「今日は最後のフライトだから、皆で写真を撮ろう」と機内で乗客に頼んで撮ってもらった。

機長も、機内アナウンスで、「26年飛んだ、愛すべきクルーが本日で引退します。Good luck!」なんて粋なことを言ったので、拍手が機内から沸いた。

そして、乗客も、Good Luck!と飛行機を降りる際に声をかけていた。

こういうカルチャーってとってもオーストラリアらしくて、すごくぐっとくる。

去る人もいれば、来る人もいる。

一時、オーストラリア国内線の大量採用の時期があった。

オージーの20歳そこそこの子達がごっそり入社してきた。

その当時、私も35歳だったから、今よりずっと若いが、新人さんの若さが眩しかった。

あの頃の20歳の子達は、今や、33歳くらいだから、また、彼らが、20歳の新人ちゃん達を見て、眩しいって思っているのかなー。

こうやって時は流れていくんだなーって思うのであった。

というわけで、当機はまもなく着陸となります。

本日もご搭乗いただき、誠にありがとうございました。

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