ボンジュール。
フランスでホームステイをしようとしたきっかけになったのは、泊まっていたユースホステルで鍵をかけていたスーツケースから、CDプレイヤーとミニラジオが盗まれたからだった。
(読んでない方は、最後にリンクあります。)
今は、音楽も携帯電話で聞けるが、その当時はもちろんそんなものはなかった。
フランスに行くにあたり、厳選したCDを持参して、CDプレイヤーで聞いた。
経験者ならわかると思うが、歩きながら聞くと、振動で音が飛ぶ。

ちょっと高いCDプレイヤーだと「音飛び防止機能」なんかがついていた。
私は、フランス語をNHKのCDで勉強していたので、そのCDを1年分、12枚、フランスに持って行った。
それらが鍵のかけていたスーツケースから姿を消した。
私が思う、容疑者は、何人かいた。
ホステルに半分住んでいた、同部屋のモロッコ人の女性、サイーダの旦那さんが第一容疑者だ。
彼は、モロッコからの不法入国者だった。
小さな船でスペインに入り、そこからフランスに北上したそうだ。
ちなみに、モロッコからスペインは、青森から津軽海峡を渡って、北海道に入るより近い。
北上するまでの話しはなんだか、すごかった。
聞きたいことがありすぎて困った。

現在、ヨーロッパは、ポーランドとベラルーシの国境に多くの難民が押し寄せて大変なことになっている。
私が滞在していた、2002年時点も移民、不法入国問題は、たくさんあった。
次の容疑者は、ホステルのハウスキーピングの人達だ。
私がこんなに疑うのは、実は、添乗員時代にフランスでお客さんが盗難被害に立て続けにあった経験があるからだ。
「スーツケースの中には、貴重品、壊れ物を入れないで下さい。」というのは、枕詞だ。
「鍵かけているから大丈夫だよね?」なんて聞かれるが、私は、
「いいえ、大丈夫じゃないです。」
と答えていた。
なぜかというと、一時期、フランスの空港に着いて、部屋でスーツケースを開けたら、荷物の一部が紛失することが多発していたからだ。
結論からいうと、空港職員がグルになり、色々なスーツケースのマスターキーを作って、盗難していたのだ。

その様子が防犯カメラにばっちり映っていて、フランスでも大きなニュースになった。
お客さんが盗難にあうのは、スーツケースの中からだけでもない。
ホテルの部屋の中でもたまーーーにあった。
アクセサリーをおいていたら、紛失したという。
そういう紛らわしいものを置いてはだめだ。
ハウスキーピングの人は、基本的には、盗らないはずだ。
なぜなら、それが発覚すると、仕事に影響を及ぼす。
大きなホテルだと、フロアー毎に部屋をまとめて掃除するので、部屋が開けっ放しになることもある。その一瞬の隙間に外部から泥棒が入ったこともあった。

だから、お客さんには、
「お互い嫌な思いをしないように、大事な物は部屋のみえるところには置かないで下さい。」
と言っていた。
以前、カナダにいたドライバーさんに面白い話しを聞いた。
そのドライバーさんは、ちょっとある実験をしたそうだ。
観光バスの座席に、CDプレイヤーを置いた。
観光バスは色々な国の観光客が乗る。
日本人が乗ったら、すぐに、「忘れ物です」とドライバーさんに申告してきた。
その次にブラジル人が乗ってきた。
そうしたら、そのCDプレイヤーが置いてあった座席の人が、
「神様のご加護あり、ありがとう」
と十字を切って、自分のものにしたそうだ。
これは、ブラジル人の名誉の為にいうが、あくまでもその時の「ある人」の話しであり、ブラジル人全体の事を言っているのではない。

なので、「基本的には、落としたり、忘れたものは海外では、戻ってこないから、立ち去るときは、3回、周りを確認してから去るように」とこの話しとセットにしてお客さんに伝えるので、私のお客さんは、忘れ物はあまりなかった。
日本は、本当に治安がいい。
外国人の観光客が電車でお財布を落としたのだが、すぐに見つかり、1円も盗られてなく、私が褒められた。
ところで、フランスで盗まれたCDプレイヤー。
実は、盗まれてから、4カ月ほど経ったある日、トラムの中で犯人を見つけてしまった。
アラビア語を話しているカップルの男性の方が持っていた。

彼が使用しているプレイヤーは、まぎれもなく私の物だった。
自分の気に入っていたシールが貼ってあり、自分が落とした時につけた傷がついていた。
カップルは、私が降りるトラムの駅の手前で降りたので、私も思わず降りて彼らの後をつけて観察した。

年齢は自分と同じくらい。
アラビア語となると、やはりサイーダの旦那か、ハウスキーピングの人達なのか?
どうやって手に入れたか聞きたかった。
でも諦めた。
それを聞いたところで本当の事をどうせ言ってもらえない。
悔しかったが仕方がなかった。
でもNHKのフランス語講座のCDは、アナタたちが聞いても、日本語の説明だからわからないでしょ。
だから、ごみになるなら、返してほしいなーなんて考えた。
こういう盗まれたものって、よく聞くのが、蚤の市に売られていることがあるという。
もしかして、私のNHKのCDも売っているかなと蚤の市に行く度に、ちょっと探していたが、結局、私の元に戻ってくることはなかった。
CDがなくても、フランス語が話せるようになったのでそれはそれでよかったのだが、ちょっとほろ苦い私の思い出だ。
というわけで、またねーー!

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