夫婦は、正反対の性格が多いとよくいう。
フランスのモンペリエでホームステイをしていた、クロウドとクリスティーン夫婦は、趣味が全く正反対。
パパのクロウドは、フランスこてこてのシャンソンが大好き。
ママのクリスティーンは、サルサが大好き。
クロウドが毎週木曜日の夜に聞きに行く、シャンソンの生演奏に一緒に行こうとちょくちょく誘うのだが、クリスティーンは、ダサいから行かないという。(関連記事↓)
クロウドは、「来れば面白いのにー」と何度か誘ってみるのだが、全然興味を持たない。
ある日の木曜日、いつものように、私はクロウドと木曜日の生演奏会、「ソワレ」に行こうとした。
この日は、クリスティーンは、私と同じようにホームステイをしている、スイス人とサルサに行くと決めていた。
そして、私に、「一緒に来なさいよ。シャンソン、本当に好き?無理してない?退屈じゃない?クロウドに気を遣うことはないのよ」と畳みかけて、呪文のように耳元で畳みかけてきた。
そういう時のクリスティーンには、凄味さえ感じる。
ある日、モンペリエ郊外のモギオというところで、スペイン人のフラメンコのショーがあるので、皆で行こうということになった。
夫婦の興味が一致した、久しぶりの事例である。
車に乗ってから、クリスティーンが、「ところでショーは、いくらなの?」と言う。
「15ユーロだよ」と答えると、「高い!高い!」と連呼し始めた。
出発早々これだと大変なので、ここは、私が割り込み、
「フラメンコなんてなかなか見られないから、その値段の価値はあるよ。」
となだめて呼び止めた。
会場は、分かりにくい場所にあるらしく、開始時刻が近いのに、見つからない。
今度は、クロウドが「間に合わない!間に合わない!」とイライラし始めた。
クロスティーンが「大丈夫よ、焦らないで」となだめた。
なんとか、会場に到着。
出発前に、「人気があるから、席がないかもよ。」なんて言っていて、私達の頭の中には、本場、スペインで見る、雰囲気のあるタブラオでのフラメンコ会場が浮かんでいた。
しかー-し、会場は、公民館みたいなところで、人は確かにいたのだが、座席は余っているようで、ガラーーーんとしていた。
あれれ?と思ったのは、私だけではない。
横にいたクリスティーンは、うかがわしい眼差しを私に送っていた。
しかし、クロウドは、全然気にしていない様子。
そして、いつも通り、定刻では始まらず、予定開始時刻より20分遅れでショーが始まった。
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最初の15分は、The フラメンコ!といったショーでクリスティーンの目もキラキラしていて満足そう。
次に、ギターの2人の弾き語りが始まった。
すると、クリスティーンの退屈モードにスイッチが入った。
彼女は、感情が態度にすぐ出る、とても分かりやすい人。
足をブラブラさせて、つまらなそうにしているが、気が向くと拍手をしている。
その隣で、クロウドは、とても楽しそう。
この2人のギャップが私のツボだ。
極めつけは、最後に出てきたメイン歌手の登場の時だった!
この歌手、フラメンコとは関係ないようで、歌った曲が、60年代の THE シャンソンという曲調のものばかり。
そう、いつもクリスティーンが「ダサい」と豪語する類のものだ。
すると、幸せそうに聞いているクロウドの耳元で、
「ねえ、フラメンコは、もうないの?フラメンコショーって言ったから来たのに。」
とブツブツ囁く。
極めつけは、アンコールの時。そのシャンソン歌手が好評につき、3曲歌った。
クリスティ―ンは、「またー?」と曲のたびにブツブツ唱える始末。
帰りの車の中でクリスティーンが、
「今度、アナタが誘ってくる時は、前もって、その会場に連絡をしてしっかり内容を聞いてから行くかどうか決めるわ。」
と言った。
クロウドは、
「やっぱり、連れてこなければよかった。Mutsi(ムッツィー)と2人で来れば、いつものようによかった、よかったと楽しく終われるのに。あー失敗、失敗。」
と言い合う始末。
この2人の夫婦喧嘩はいつも激しい。
「昔はこうじゃなかった!」「もう離婚よ!」などと、ホームステイしている、私達がいても全く気にしない。
逆にこっちが、席を外したほうがいいかなと気を遣うほどだ。
でも言い終わった後は、え?さっきのなんだったの?と思うくらい、元に戻っている。(関連記事↓)
そんな2人は、実は、毎月1回のクラシックコンサートには、一緒に揃って鑑賞しに行く。
いつもは、自分のしたいことをそれぞれが勝手にやっていて、喧嘩はする時は、激しいけど、共通の好きなものを大事にして、結局仲がとてもいいのである。
お互い違うと認めて、それぞれが好きな事をやってて、共感できるものがあると、「じゃあ、一緒に楽しみましょう」という流れだ。
フランスに住んで、一歩踏み込んだ交流が出来て、こんなことを知ることもできた。
またいつか、1年くらい、フランスに住みたいなーなんて最近よく思うことがある。
おしまい。
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