CA経験者が感じた、羽田空港 JAL機衝突炎上について

エッセイ

2024年、新年あけましておめでとうございます。

お正月に能登地震、翌日は、羽田空港でのJAL機衝突事故と、新年から大きなニュースが続いた。

私は5年間だけだったけど、CA(客室乗務員)の仕事をしていたので、羽田のJAL機の事故は、

「自分だったらどう行動してだろう?」と本気で考えてしまった。

そして、詳細が分かるに連れ、ますますその考えが強くなった。

CAは、接客業と同時に機内の安全を守る責任を担う保安要員であると改めて感じた。

今回の事故で死者が一人も出なかった奇跡を起こしたのは、日頃の訓練の成果と評価されている 。

CAの訓練は、本当に本当x 1000 に大変で、落ちこぼれだった私は、本気でもうだめかもと何度も追い込まれた。

以前に書いた、訓練のブログを読み返してみた。

1番大変だったのが、「モックアップ」という、実際の機体模型を使う訓練だ。

グループに分けられ、機内での各ポジションで緊急事態が起きた時に動けるように訓練される。

教官が、色々な想定を仕掛けてくる。

まず、各々、機内サービスをするふりをするところから始まる。

私の好きなチキンor ビーフの食事サービスだ。

すると、ギャレー(機内のキッチン)から煙もどきなものがモクモクと出てくる

そこで、私達は、「機内が火事になった想定」で実際に動けるかを試されていると判断する

そこで、消火器を持つクルー、

パイロットに連絡するクルー、

乗客を誘導するクルーなどに扮して、

何をすべきか即時に判断して動かなくてはならない。
それができるかどうかを教官にチェックされるのだ。

火事に関しては機内の壁などをはがす時に使う、消火用の斧、消火時に煙を吸わないようにする被りものや、耐火用のグローブもある。

こういう仕掛けは、他にもあって、酸素マスクが落ちてきたり、窓の外が赤くなると外が火事ということなので、その際にどうするかなど、自分に何がくるかドキドキなのである

知識は学んだが、いざやるとなると体が思うように動かない。

もう1つ大変なのが、緊急脱出のロールプレイだ。

これは、大きな声を出して、乗客脱出の誘導をするのだが、その時のセリフを、一字一句間違えてはいけないのである。

地上での脱出編と水上での脱出編がある。セリフも微妙に違うので、大変だ。

Evacuate, Evacuate, Evacuate (避難、避難、避難)というフレーズから始まり、結構な長さを覚える。

緊張感MAXだ。(ここまで抜粋)

今、改めて読んでもドキドキしてきた!

そう、私は訓練の時からタジタジだった。

今でもよく覚えているのが、自分のドアが火事になった設定に当たったことだ。

内心、「きたぁー!」と思い、パイロットにインターフォンで連絡して、周りのクルーにも自分のドアは緊急時も開けることができないことを伝える。

そこで、どこのドアを開ける事ができるのか、確認して、避難経路を確保する。

私の乗務していたA330は、8か所ドアがある。

8人のCAの中で私のように自分のドアを開けられない役になったCAは、ドアの前に仁王立ちし、Block Door!「このドアは、ブロックします」と叫ぶ。

乗客がパニックからドアを勝手に開けないように、避難できるドアの方角を示す。

そう、パニックになるお客さんを落ち着かせるのも、大きなCAの役割だ。

緊急時にドアを開けると、脱出シューターが出てくる。

結構な高さで、降りる時もかなりのスピードで、訓練じゃなかったら、「キャー」と言ってたところだ。

今回の羽田空港での事故は、機内のインターフォンの不具合でパイロットからの指示が仰げない状況だった。

前方左右2か所と、一番後方、左側のドアを開けた。

一番後方、左側のドアは、日本線に乗る時、日本語アナウンスの担当者のポジションなので、私には、親しみのあるポジション。

「火は見えないけど、もしいざ開けて、火が出ていたら」と思うと、私があの場所にいて、実際ドアを開けられたか、ちょっと自信がない。

ちなみに、通常時に、間違ってドアを開けた場合、莫大な経費と時間がかかり、CAは、クビになると聞いた。

そんな開かずの間。

今回は、それをこじ開けて、無事に全員脱出できて、本当によかった。

CAの皆様は、その後、メンタルは大丈夫だったかなと気になっている。

というのもこの時代だからこそだが、動画がSNSに出ていて、顔がモザイクになっているものの、CAの動きなどある意味、証拠が世に出ているのが恐ろしいなと思った。

今回は、称賛という形だったので事なきを得たが、逆だった場合の事を想像すると本気でゾッとする。

今の時代、誰もがパパラッチになりうる。

もし、今回、大惨事になっていた場合、そのCAの行動が全世界にさらされ、本人達は、全力を尽くしたとしても本人だけでなく、家族なども公開処刑されてしまった可能性が十分あったと思う。

動画のおかげで、事故の詳細が生々しく伝わり、加工ナシのニュースを見ることができた。

その反面、その動画が世にさらされてしまい、その後の人生が大きく変わってしまう人も出ると思う。

危険と享受が表裏一体だなと思った。

海上保安官の方がお亡くなりなったが、能登地震の被災地に向かう予定だったということを聞き、更に無念さを感じる。

改めて、人生、明日、いや、1時間後に何が起こるかわからないなので、悔いなく、今を生きなければと、思った。

この年になると、今年の抱負というのを特に掲げないのだが、今年は、こんな幕開けだったので、悔いなく日々を過ごそうと思っている。

皆さまにとってもいい年になりますように!

次回は2週間後の1月24日投稿予定です!

<思い出ブログ>

本当に本当x 1000 に大変だったCA訓練の日々の様子。

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